十三人の刺客
画像表示切り替え監督: | 三池崇史 |
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出演: | 役所広司、山田孝之、伊勢谷友介、伊原剛志、松方弘樹、稲垣吾郎、岸部一徳 |
時間: | 141分 |
公開: | 2010年 |
キャッチコピー: 命を、燃やせ。 | |
ジャンル: アクション、サスペンス、時代劇、リメイク |
コメント一覧
石田憲司 | 簡易評価: なかなか | 見た日: 2016年06月29日 | 見た回数: 1回
柴田宣史 | 簡易評価: なかなか | 見た日: 2011年08月04日 | 見た回数: 1回
てっきり『シグルイ』の徳川忠長がモデルなんだと思ってたら、シグルイが江戸時代初期で、駿府なのに対して、本作は後期(しかも明石)で、また実際に徳川家斉(いえなり)時代想定という背景もあるのだそうで。
この家斉さんもWikipediaによれば、それなりの人らしく、江戸時代変人総覧のコマは豊富だなあと(あ、そんなに単純じゃないですね。そのもの(松平斉韶(なりつぐ))が実在し、かつその後継の斉宣(なりこと)というのがいて、こちらの参勤交代の逸話があるのですね。)。
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ところで、本作の監督は三池崇史さん。(わるいことではないけど)節操なく映画を撮る人だなあという印象だけど、たとえば「ヤッターマン」。ドロンジョをさておき、いろいろととってもいい映画化だとは思うけど、阿部サダヲさんの演出はどうだかなあと思う。役者がどうこうではないんです。演出です。
本作でも、13人目の男が、山賊で、作中にこの山賊のセックスのシーンが挿話されるのですが、これがなんか、なんというかイマイチなのです。
この山賊に、縛られたサムライを相対化する役目が負わされているのは、きっと間違いないと思うのです。でも、こういう映画にとって、そういうのどうでもいいと思うのです。そんな相対化は不要だと。
なにかに縛られたサムライをあざ笑うように、映画自体のなかでも滑稽な演出でこの山賊のセックスが描かれますが、その滑稽さは蛇足なんではないでしょうか。
あとその山賊の無敵さ加減も、爽快感のためのカンフル剤だとしたら、やっぱり趣味が合わないなあ、と。「七人の侍」のような、とことん汚いサムライの戦いで十分に満足できると思うのに。で、それくらいの地力を感じる映画なんですよ。映画自体からは、なにか面白いことに挑戦したなあと感じさせるのです。それでよけいに残念なんですかね。
見終わった後、奥さんが、「女子、出てこなくてよかったね」と言っていて、そうだねえと思ったのですが、蛇足がなかった訳ではないなあ、と思います。
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でも総じて、暗君の暗君ぶりもよかったし、けっこうえげつない表現もあって、それなりに楽しかったです。
松方弘樹がさすがの殺陣を披露。動きが一人違うなと。しみじみ東映時代劇(松竹だっけ?)で育ってきているんだなぁ。と思ったもんです。
もちろん、他のメンバーが下手ということではなくって、それぞれの役者さんたちがそれぞれに特徴もった絵になる剣さばきを披露してくれてて、飽きさせない。
剣豪らしい伊原剛志しかり、槍の名手な古田新太しかり。山田孝之だって取り立てて技で目立ってるわけではないけれど、見事なもんである。伊勢谷友介もサムライじゃないけど魅力的。
が、松方さんである。「元気が出るテレビ」でにこやかに笑ってるほうが印象的(古い?)かもしれませんが、さすが本職。動と静を制御して、いかにカッチョ良く見せるかがわかってる感じが、明らかに異質。うーん。カッチョよろしい
あそうそう。敵役の吾郎ちゃんにも触れておきましょうか。なかなかに狂った人を演じられてていいんじゃないですかね。
総じて満足なんですが、いかんせん。一箇所があまりに悲しい。進撃の巨人でいうところの「立体機動」に匹敵するくらい悲しい、火をつけられて所構わず突っ込む牛たちのCG。
そりゃ、ハリウッドだったらもっとそれっぽく作り上げるだろうし、中国だったらほんとにやっちゃうかもしんないけど、ここは日本。ほんとにやったら愛護協会の方々から非難ゴーゴーってのもわかるんですが、だからってあの牛シーンだけ妙に作り物感満載で合成感も満載で、あまりに悲しくなる。
例えば牛だけ走らせて、あとから火を足す。みたいなこと出来ると思うんだけどなぁ。そのへんは予算と期間の問題なんだろうか・・・本物の牛じゃ、思った通りに動いてくれないし。
ということで、ちと残酷シーンもありますが概ね満足。牛さえなけりゃ間違いなくオススメにしてたんじゃないかな。
追記:そういや主役の役所広司さんのこと一切触れてなかったな。安定の一言です。はい。