バック・トゥ・ザ・フューチャー BACK TO THE FUTURE

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監督:ロバート・ゼメキス
出演:マイケル・J・フォックス、クリストファー・ロイド、リー・トンプソン、トーマス・F・ウィルソン
時間:116分
公開:1985年
ジャンル:
SF

コメント一覧

柴田宣史 | 簡易評価: おすすめ | 見た日: 2009年01月01日 | 見た回数: とてもたくさん

時間旅行ものの古典でもはや一般教養的な映画ですね。「デロリアン」という単語は、それがなんなのかよくわからなくても当時の少年少女の心に残ってしまったと思います。

* * *

2009年、最初の映画は期せずしてバック・トゥ・ザ・フューチャー1作目になりました。何度みても、よくできていますね。やっぱりタイムトラベルものならではの縦横無尽の伏線は、こういう映画の遊び心あってのものだと再確認しました。ロバート・ゼメキス、偉いなあ。

尾内丞二 | 簡易評価: おすすめ | 見た日: 2008年06月30日 | 見た回数: とてもたくさん

映画好きをやっていると時々『今まで観た中で一番好きな(面白かった)映画は?』という質問に出くわすことがある。

この考え方に共感できる人間がどのくらいいるかは判らないが、自分をいっぱしの“映画ファン”だと思うのであれば、決してこの問いに回答してはならない。
この質問は『人生で最も美味しかった料理は?』というのとほとんど同じ意味だからである。

良い映画というものは全て“美味しい料理”であり、それに順番を付けるのは阿呆のすることだ。

この質問をする者が、いったいどれほど真剣にその答えを知りたがっているかは別として、本当に回答者から満足する答えを得たいのであれば、そもそも質問の仕方が間違っている。

『人生で最も美味しかった料理は?』ではなく、例えば『今まで食べたハンバーグで一番美味しかったのは?』と聞けば良いのだ。

質問の答えが限定されていれば、それを答えることで背負う責任も軽くなる。

つまり、これからはこんな風に質問すれば良い。
『今まで観た中で一番好きなSF映画は?』

…僕は即答するだろう。
『 BACK TO THE FUTURE 』


ここまでが前置き。物語の核心に触れる部分があるので、まだ観ていない方はこれ以降を読まないで下さい。


今日でこそ社会の底辺で映像デザイナーとして生計を立ててはいるが、この映画と出会った当時、僕はまだ“SFX”が何の略なのかも知らないケツの青い小僧だった。

もともと映画は好きだったが、今思うとその頃の僕には良い映画も悪い映画もなかったように思う。映画は映画。それ以上でも以下でもない。

ところがちょうど高校に進学した頃、僕は初めて映画を『ヒトが作った物』として意識し始めた。

…少し言い方を変えると『僕はどうやったらこれと同じ映画を作ることができるだろう?』という考え方をするようになったのだ。
役者やロケーション、撮影機材や収録スタジオ、特殊効果と作曲家。仮にこの全てを自由に使えるとして、僕にこの映画が作れるだろうか…?

そう考えながら“BACK TO THE FUTURE”を観ると、それまで意識していなかった事までが見えるようになってきた。

役者のセリフのどのタイミングでカットを変えて、どのような動きとアングルでカメラを動かし、その時に何が“映っている”のか。

具体的に説明すると、例えばマーティーが1955年にタイムスリップして間もなく、喫茶店で父親のジョージと会話をするシーン。

カメラは喫茶店のカウンターの中から撮影しており、マーティーは向かって右側。ジョージは左側に座っている。
二人の背後には店の入り口があって、その左右には通りに面した大きいガラス窓。

いじめっ子のビフに抵抗できなかったジョージに、清掃員が「なんで何も言い返さないんだ。」と詰め寄る(この時ジョージはすでにポケットから小銭を取り出して会計の準備をしている)。

ジョージが『Because they're bigger than me.』などと答えていると、清掃員が店長から『Watch out Goldie.』と注意を受ける。

清掃員が未来の市長だと気付いたマーティーが『You gonna be mayor!』と言い、驚いた清掃員のアップ。

次のカットでジョージがフレームから外れて、店長と清掃員のやり取りが入り、マーティーがやれやれといった感じでコーヒーを口に運びながらジョージの方向に向き直り、カメラがそれをパンで追う。
ところがそこにジョージはおらず、焦ったマーティーがコーヒーカップをソーサーに落とすと、背後の窓をジョージが横切っていく(カメラはほとんど動かない)。

あわてて店を出るマーティーをカメラが右方向のパンで追い、左向きのパンでジョージが見えた窓まで振ると同時に、店を出たマーティーが右からフレーム・イン。

いったん立ち止まって『Hey! Da.. George! wait!』と叫んで画面左にフレーム・アウト。

…実に見事なカメラワークだ。

この映画の一番の魅力はもちろんストーリーそのものなのだが、こういったカメラワークを行うことで、役者のセリフの流れを邪魔することなく、しかも無駄にカットを切ったりカメラを動かしたりせず、テンポの良いストーリー展開を実現しているのである。

役者の演技、カメラワーク、そして音楽。これらの異なる要素が“ストーリー”というメインストリームに乗っかり、お互いがお互いを高めあうよう時間軸の上で旋律を紡ぐ協奏曲。それが映画なのだ。

あれから10年以上の月日が流れ、自分自身が映像制作に携わるようになった今でも、この映画を観ると感嘆の声を漏らさずには居られない。

映画の構成・演出が見事なのは言うまでもないが、なによりも『今観ても面白い』のだ。

100回近く視聴しているにも関わらず、初めて観た時とほとんど変わらない感動を与えてくれる。与え『続けて』くれる。

そんな映画はこの“BACK TO THE FUTURE”を措いて他にない。

マイケル・J・フォックスとクリストファー・ロイドのコミカルかつ軽快な演技はもはや“癒し効果”まで期待できくらいだし、若かりし頃のリー・トンプソンも可愛い。本当に可愛い。
『ジョニー・B・グッド』の演奏後、申し訳なさそうに「ジョージに家まで送ってもらうことにしたの。」と打ち明け、予想に反して喜ぶマーティーを見て嬉しそうにほほ笑むシーンなど、妻帯者の身でありながら『結婚してくれ!』と思ってしまう。

他の名作映画ならば『まだ観てないよ。』と言われたら『あーあ、可哀想に。』と憐れみの気持ちだけが湧き起こるが、この“BACK TO THE FUTURE”だけは例外で『この映画の一回目を“これから”観ることが出来るなんて、なんて羨ましいんだ!』という嫉妬に似た感情すら覚えてしまうのである。

大してマイケル・ジャクソンのファンでもなかった連中がお祭り騒ぎに乗せられて“This is it”を買いあさる昨今。

そして呆れる彼らの感想。『なかなかいい映画だったよー。』

馬 鹿 野 郎 が !!

最近の若い連中は何が映画かも知らないでいやがる。そんな連中は黙って“BACK TO THE FUTURE”を買えばいいんだ。

これこそ正に映画の中の映画。
『This is it』なのだから。

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