宇宙戦争(2005) War of the worlds

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監督:スティーブン・スピルバーグ
出演:トム・クルーズ、ダコタ・ファニング、ティム・ロビンス、ミランダ・オットー、ジャスティン・チャットウィン
時間:116分
公開:2005年
ジャンル:
SFリメイク

コメント一覧

尾内丞二 | 簡易評価: おすすめ | 見た日: | 見た回数: とてもたくさん

最近『この映画の面白さが分からない』という方と意見交流する機会がありました。
 
彼は言いました。
「確かに映像とかは凄いと思うけど、あの終わり方は酷い。細菌が宇宙人をやっつけてなにが面白いの?」
 
 
本作を楽しめない大多数の方々は、おそらくこの考えに近い意見を持っておられるのだと思います。
宇宙人が攻めてきたら、冴えないオッサンとか元軍人とかが右往左往しつつ、あることをきっかけに宇宙人を倒す手掛かりを掴み、最後の総攻撃ではキーパーソンの犠牲とともに宇宙船が大爆発。
 
そういうプロットを期待していたのでしょう。
 
 
ところがこれはもともとそういう映画ではありません。
『宇宙戦争(The war of the world)』
これは戦争映画なのです。
 
 
戦争は恐ろしく、悲しく、愚かしいものです。そこにカタルシスなどありません。
 
そして本作は最後まで一般家庭の父親の目線で描かれます。科学者や大統領、核兵器の発射ボタンや戦闘機のコクピットも登場しません。
だから一体なにが攻撃してきて、自分がどんな境遇に陥ったのかも分からないのです。
 
 
きっと実際の戦争というものは大多数の人にとってそういうものなのだと思います。
それまで当たり前に暮らしてきた世界が一瞬で様変わりし、事態を飲み込むより先に目の前で人が殺され家族が離れ離れになる。
 
 
冒頭のトライポッド襲撃シーンでは光線に貫かれた人々が一瞬で灰になってしまいますが、そのシーンを見て「面白い」とか「服は灰にならないんだね」などと考えているようではまだまだ甘い。
このシーンも『実際に目の前でそれが起こったら』と考えながら見るのが正解です。
 
もしも自分があのシーンに放り出された時、我々はなにを思うでしょう?
脳裏をよぎるのはきっと『恐い』や『危ない』などではなく、『自分も灰にされる』ということだけです。
 
 
光線に貫かれた人が持っていたハンディカムが地面に落ち、そのファインダーの中で次々と人間が殺されていく風景が一瞬だけ映るカットがありますが、視聴者はこのカットで唐突に現実へ引き戻されます。『殺戮風景を撮影している映像を見ている自分』という隔絶した世界の多層構造に守られるからです。ところが次のカットでは再びライブの殺戮風景。
 
これは一瞬だけ三重構造の外側を見せてから即座に二層目に引き戻すことで、『あともう一段階視点がシフトしたら次はこの世界に放り出されてしまう』という無意識下への印象付けをしているのです。すぐれた演出家はこのような『視点の揺さぶり』を巧みに利用してきます。
 
 
ところが悲しいことにほどんどの観客はテレビやゲームの見過ぎでそんな感覚が麻痺していますから、そんな演出などどこ吹く風で恐怖を感じることができません。嘆かわしいことです。
そこでスピルバーグはそれを分かり易くきちんとアフターフォローまでしてくれています。
 
灰にまみれた格好で茫然としながら家に戻り、何があったのか尋ねる子どもの声にも応えず、洗面台に映る自分が灰まみれなことに気づいて初めて我に返るのです。
自分の全身に付着した白い粉が『少し前まで人間だったもの』だと気づいてようやく恐怖に襲われるわけです。
 
僕には『人が殺されるというのは恐ろしいことなんだよ?ひょっとして忘れていませんか?』というスピルバーグの声が聞こえてきます。
 
 
 
細かな解説を語りだせば枚挙に暇がないのでこの辺で割愛しますが、間違いなく本作はジョーズE.T.プライベート・ライアンを撮ってきたスピルバーグだからこそ作りだせた一級品の映画だと思います。

石田憲司 | 簡易評価: おすすめ | 見た日: 2008年07月31日 | 見た回数: 3回

同時期に公開された、(これまたルーカス様の)「スター・ウォーズ エピソード3 / シスの復讐」と比較した時に、派手なのはあちらですが、作品としてはこちらも引けをとらない。さすがはスピルバーグ様。という一本ですかね。
今回見直して改めて実感しました。幕引きが地味なのですが、パニック映画とはこう作るんだよ。と教えてくれているかのような緊張感。お見事!

柴田宣史 | 簡易評価: おすすめ | 見た日: 2008年07月31日 | 見た回数: 1回

エンターテイメント映画の王者スピルバーグの、ある種の完成形を見た気がします。スピルバーグ映画は「ミュンヘン」を見たときに、一皮むけた感じがあったのですが、この「宇宙戦争」は、演出の趣味のよさで、またかなり上質な味わいになっていると思います。ずっと昔に見たリメイク元の作品も好きですが、もう一度見たいのは、と問われれば、こちらに軍配があがりますね。

尾内丞二 | 簡易評価: おすすめ | 見た日: 2008年07月30日 | 見た回数: たくさん

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