黒い家 BLACK HOUSE

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監督:シン・テラ
出演:ファン・ジョンミン、カン・シニル、ユ・ソン、キム・ソヒョン
時間:104分
公開:2007年
ジャンル:
ホラーリメイク

コメント一覧

柴田宣史 | 簡易評価: いまいち | 見た日: 2009年09月25日 | 見た回数: 1回

単体でみてたら「まあ、こんなもんかな」という評価だったと思うのですが、日本版「黒い家」の鮮烈な印象の後の作品としては、フツーでつまらないつくりでした。

日本版で書き忘れていたのですが、何が印象的だったって「チチ、しゃぶれー」っていう階段のシーンだったのですが、韓国版のハートレスは、美人だったこともあって、スケベ心からそのシーンが楽しみだったのもあるのですが、あっさりカット。

いやいや、だから評価が下がる訳ではなく、みたらわかるのですが、けっこう端折ってるのです。

日本版、なにがよかったって、二つの作文のコントラストがよかったんです。一見、無害に見えるブランコの作文と、みるからにちょっと不気味な死者との邂逅の作文。

しかし、説明が加えられることでブランコの作文の異常性が、ズシリと重たくなって緊張の糸を一気に引っ張る。そして、その緊張のままラストまで連れて行ってくれる……って、韓国版はそういうのは全然ないんですよ。

で、どうしたって言うと、舞台である「家」がおどろおどろしいのです。

んー、わかってない。

もう一回言いたい。

わかってない。

普通だから怖いんですよ。普通の家だからエド・ゲインをおもいだすのですよ。あんな屠殺場のような銭湯のような場所、怖くも何ともないっすよ。だからそのシーンもぜんぜんテンスがありません。

リメイクだからって、全く同じに作らないといけない訳ではないんですが、大きく違うのは主人公の能動性です、日本版より遥かに凛々しいのです。で、その主人公には物語を進める動機付けとして、幼い頃の弟の自殺があるのですが、この「弟の自殺」。職業作家でもない僕ですが、あえて言いたいのは、この「弟の自殺」は、ストーリーテラーにとってのハニートラップです。

これをいれることで話のつじつまに説得力を持たせられるのはよくわかります。でも、これを持ち出すことで、説明が完成してしまい、自分で探る部分がなくなって、つまんなくなっちゃうんです。よい意味で未完成のまま渡してほしいのに、そんなに耳を揃えて渡されちゃうとつまんないんですよ。

以下、さくっとネタバレてしまいます。

ここから先はお話の核心に関わる記述があります。このリンクで読み飛ばせます。あるいは次の見出しにスキップしてください。

クライマックスは日本版とかなり異なります。もみ合った末、屋上から落ちそうになるハートレスを主人公が支えます。主人公はハートレスに言います。「つらい弟の死を見た僕としては、もう人が死ぬところを見たくない」。ハートレスは主人公の手を包丁で切ります。主人公は手を放し、ハートレスは落下する。

このハートレスが主人公の手を切ったのは、主人公に許しを与える行為にほかなりません。主人公の努力を超えるような事態があり得るのだということを示してしまうのです。

ほんとうのハートレスだったら、主人公にきっちり引き上げてもらった後、ゆっくりと主人公にとどめを刺せばいいのです。大竹しのぶさんだったら、間違いなくそうしただろうという確信があります。

韓国版ハートレスは、あの手の甲を切る行為によって、主人公を救おうとする行為によって、「羊たちの沈黙」のレクター博士や、日本版の「黒い家」クラスのヴィランから格下げされてしまうのです。

隠しテキストはここまでです。

というわけで、本当だったら相対価値で最低評価でもいいのかもしれませんが、じつは格好いい絵が散見されます。

まず美人なので、片目をつぶされて血みどろになっていてもきれいなのです。彼女が出刃包丁を支えに立ち上がるシーンなどはなかなかきれいです。また、ストーリー上はさらっとしすぎていますが、それを補うくらい、ブランコの夢の描写はよかったです。ただ、ブランコの夢に関しては、僕が日本版直後にびくびくしながら見た夢との比較があるので、ひいき目かもしれませんが。

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