ハゲタカ

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監督:大友啓史
出演:大森南朋、玉山鉄二、栗山千明、柴田恭兵
時間:134分
公開:2009年
キャッチコピー:
こんな国に、誰がした。
破壊者か? 救世主か?
ジャンル:
ドラマ

コメント一覧

石田憲司 | 簡易評価: なかなか | 見た日: 2012年10月19日 | 見た回数: 1回

いやね、もともと金融界には縁遠いんですが、僕の知識の大半をしめる「マネー革命」というNHKスペシャルがあって、そこでは異世界の戦いが繰り広げられているんだ。天才たちがしのぎを削るというシーンに、ついていけんわい。というのが半分。もう一方は憧れと相まっていた記憶があります。

さて今作、ドラマ上がりなので主人公の社会的な立ち位置とか登場キャラのつながりとかが全くわからず困っちゃう。嶋田久作さんなんて、結構悪があって存在感あるだけに、なんで主人公と絡んでるのか。とか気になるところも残ってますしね。
さて、本編。前半はTOBを仕掛けてきたり、それに対抗すべく画策してみたりするわけで、結構盛り上がるんですが、いざ、最終決戦になるに連れて若干スケールダウン。
いや、話自体は国家絡みで大きな話にはなりますし、他の金融問題も絡めて、大事にこそなるんですが、あまり駆け足で経過しちゃったのがちともったいなかった気がします。でも、それも、現実の金融界と同様、立ち止まってたら何にもできなくなるのかもしれませんなぁ。おーこわ。

スタート時点から緊張感を持って話が展開していくし、特別ダレることなくエンディングまで突っ走るので、細かいことがわかってなくても雰囲気で乗りきれるような気もするし、経済ドラマとしてTOBとホワイトナイト的な立場。停滞気味の日本企業とお金持ち国家の勢い。あたりが何となーくわかってりゃ、それだけでより現実とオーバーラップさせて見れるので、これまた良い感じかもしれません。

ということで、別段勿体つけたような内容でもないので、さっさと上げといても良かったんですが、まぁ、その辺はいいとしましょう。柴田さんには若干マイナス目似とられちゃってるかもしれませんが、概ね満足なのですよ。ただ、ラストがもったいなかったなー。と。あれがもうちょっと丁寧にできてたら「オススメ」にしてもいいかなぁ。くらいにね。

こーなって来ると「金融腐蝕列島 呪縛」もちょっと気になるのだ。いつか見るのかなー。モロおっさん向けな印象があるけどさ。

柴田宣史 | 簡易評価: なかなか | 見た日: 2012年10月25日 | 見た回数: 1回

真山仁の小説『ベイジン』が面白かったので、同じ作者の作品ということで見てみました。

『ベイジン』も中国と日本のネタなのですが、本作も中国資本による日本企業の買収危機の話です。

* * *

僕も、もうちょっと割り切ることができるようになって、牧野さんのようにコスモポリタンになることができたらいいのですが、なかなかそうはいかず、ナショナリズムを自分の中に見いだすことがしばしばあります。

僕たちが仕事で作っているものは、プログラムだったり、デザインだったりして、あまり物質的でないので、違和感を感じる人もいるかも知れませんが、「時代工房」という会社が「工房」だと(会社の総意だとか、経営者だからとか、そういう訳でなく単純に柴田個人が)言い張っている根拠の一つは、ある種のナショナリズムと言えるような気がするのです。僕自身は「もの作りの国 日本」という言葉と概念が好きなのです(「はやぶさ 遥かなる帰還」でも、そういう感じがあって好きなのです)。

ヴァニティ(うつろなもの)があるのでなく、実(じつ)がある──というような、なにかを感じるのでしょうか。

もちろんコンサルタントや教師が悪いとは、本気では思っていないのです。知っているのと知らないのとでは、物事は大きく変化し、それで幸せになることも不幸せになることもあります。でも、僕はもの作りに関わっていたいし、仲間もそう思っていたらいいなあと思っています。

* * *

本作では、その「職人の本懐」というべきものをを捨てた三代目が、買収の憂き目に遭うという構図で、どこか「もの作りの国である日本に還ろう」というメッセージにも見えます。

でも、皮肉なのは、本作で、「もの作りの国日本」を守るのは財テクなのです。

日本は、もうずっとまえに「もの作りの国」ではなくなって、財テクの国になっている、というメッセージを感じるのは深読みのしすぎなのでしょうか。

* * *

あと映画の本質とは関係ないのだけど、奥さんは、奥さんの好きな柴田恭平氏と会えて嬉しかったようです。彼も随分とお年を召されましたね。

ほか、ガオレンジャーに出てた男の子(玉山鉄二)が松田くんに見えてしょうがありませんでしたが、松田くんの末路とかぶる演出にも驚きました。それに、女性記者はゴーゴー夕張なんですね。

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もいっちょ、覚え書きです。いちおうネタバレ隠しで。

ここから先はお話の核心に関わる記述があります。このリンクで読み飛ばせます。あるいは次の見出しにスキップしてください。

  • ラストね、劉氏が刺されるじゃないですか。あれ、どう見ても東京ですよね。映画の展開上それが必然だとしても、なんだか非常に不自然ですね。おかげで(劉氏が)救われるところもあるのですが……。
  • 車の絵は挿話としてはわかるけど、そんな長いこと飾っておかないですよね。
  • リゾートにいたり不機嫌だったり復帰したりと、いろいろといわくありげな鷲津さんですが、けっきょくどういう人物なのかは、ぜんぜん描かれません。これは小説読めってことなのかな。
  • 鷲津ファンド側が毒饅頭を仕掛けて、中国資本側がその仕掛けに乗ってしまう展開は、映画としては格好いいけど、とっても無理がある展開にも見えますね。
  • 映画最後に、「人の不幸は、金が多すぎる不幸と、少なすぎる不幸の二つに大別される」とモノローグが入りますが、いやあ、そんなに単純化できないでしょう。

隠しテキストはここまでです。

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本作、石田さんも最近に見ていて、僕に影響を与えまいと、コメントを保留いただいていたそうです。というわけで早々にコメント上梓いたします。石田さん、お気遣いありがとうございます。おかげさまでピュアに楽しめました。

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