ここから本文です
善き人のためのソナタ Das Leben der Anderen
画像表示切り替え監督: | フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク |
---|---|
出演: | ウルリッヒ・ミューエ、セバスチャン・コッホ、マルティナ・ゲデック、ウルリッヒ・トゥクール、トーマス・ティーメ |
時間: | 138分 |
公開: | 2007年 |
キャッチコピー: この曲を本気で聴いた者は、悪人になれない | |
ジャンル: ドラマ |
コメント一覧
柴田宣史 | 簡易評価: おすすめ | 見た日: 2010年01月11日 | 見た回数: 1回
石田憲司 | 簡易評価: おすすめ | 見た日: 2009年02月18日 | 見た回数: 1回
ズシリといい話。
ストーリーがしっかりとして当時の東ドイツらしい緊張感とベルリンの壁崩壊後のドイツ的な開放感に連動するようなで素敵でしたね。
惜しかったのは、主人公(どっちだ?)の監視役の心が変わったところ。キャッチコピーにもあるように、あの曲のシーンあたりからだと思うのですが、そこまで冷酷な監視人がなぜ変わったのかというのがよくわからなかったんですねー。曲ではなく、彼ら芸術家との(ちょっと特殊ですが)ふれあいの間に変わっていったという印象の方が強い。ので、キャッチコピーはちょっと違うかな。ただ、その点を含んだとしても、良かった。
この手の作品はちょっと否定するには難しい種類(「シンドラーのリスト」とかね)の映画ですが、その辺の部分を抜いても作品としてよく出来てたと思います。
最後の彼のコメントが素敵です。
※ドイツっぽいと言えばドイツっぽいのかな?フランス映画とは違ってまたこちらもお国柄な雰囲気がずんずん伝わってきました。
こういうドイツな雰囲気が嫌いじゃないからこそ、フランス映画に心が響かないのかなぁ。
最初、実話と思い込んでいたのですが、状況は史実にあっているものの筋立てとしては、フィクションですね。
たしかに惹句からは、ピアノソナタの美しさをきっかけに、管理社会に対する妄信がゆらぐ、という印象がありますが、むしろそのソナタについていたタイトル──つまり本作品の邦題タイトルですが──に心を揺らされた、という印象があります(ちなみに、この映画のために書き起こされた楽曲だそうですね)。
石田コメントにあるように、この部分はややわかりにくく、しかし芸術家同士の情熱に心を打たれるには、ヴィースラー大尉は、あまり経験を積みすぎている印象があります。むしろ、僕には、そのソナタの「曲名」によって、自分の価値観を相対化されてしまった故の行動だと考えた方が自然に思えるのです。ので、僕はじつはその付近にある、たまたまエレベータに乗りあわせた少年とのやり取りは、けっこう重要なシーンだと思うのです(以下大意引用)。
それにしても驚きなのは、最後の部分ですが、「その」資料、閲覧できるんですね……。
さておき、どかーん、ばきーん、うぎゃー、にげろーというのがないので、少々眠いところはあるものの、これも石田コメントに賛成ですが、最後のセリフ、いいですね。あんまりいいので、ここに書いちゃうなんて野暮はしませんが、報われる一言です。
あと、もう一点大事なのは、ヴィースラーが娼婦を呼ぶところです。ことが終わった後、「もう少しいられないか」と尋ねます。彼が冷徹な機械のような人間でなく、人恋しさを知る存在であることが、あの最後の台詞を際立たせるのだと思うのです。