バンコック・デンジャラス BANGKOK DANGEROUS

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監督:ダニー・パン、オキサイド・パン
出演:ニコラス・ケイジ、チャーリー・ヤン、シャクリ ット・ヤムナーム
時間:99分
公開:2008年
ジャンル:
アクションサスペンス

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柴田宣史 | 簡易評価: まあまあ | 見た日: 2009年09月14日 | 見た回数: 1回

自分の生活が満ち足りていれば、わざわざ危ない橋を渡る人は少ない。もちろん冒険心というものはあって、そういう気持ちは、満ち足りていても、その状況を揺るがすようなことをさせてしまうことがある。

だから、たとえば他人の果樹園からリンゴを盗む人は、自分の果樹園が枯れたとか、そもそも貧乏だとか、何か理由があってそれを行う。「満ち足りている」というのは、普通は理由のない、動機のない状態であって、物語というものは、理由がある場所に存在する。

ストーリーテラーは、犯罪者についての物語を描く。犯罪者には、犯罪者になる理由があるからだ。人殺し、殺し屋という職業は、その典型である。

こんなにも身の回りにいない職業であるにも関わらず、僕は山のように「殺し屋が主人公の映画」を見たことがある。想像するに、お話を書いた人たちも、そのほとんどは殺し屋にインタビューして書いたわけじゃあないだろう。でも、殺し屋という職業はストーリーテラーの心をとらえてきた。その理由は、やはり人を殺すということが、人の大きなの「負い目」だからではないだろうか。

で、本作の主人公はその殺し屋。

記号的に読めば話は単純だが、

・社会や共同体に対して生産的に関わることができない、心に負い目を追う中年の主人公

が、

・身体障害者(唖し)としてのハンディを抱えつつも清い心の女性
・社会環境のためスレてはいるものの憎めないところがある若者

らとの出会いによって、自分の価値を模索する。でもってその中年の殺し屋をニコラス・ケイジがやるわけですよ。「リービング・ラスベガス」っぽい表情で。あんなふうに世の中まぶしそうで、ちょっと泣きそうな顔を持続できるのはある種の才能ですよね。小説にあって、映画にないものは第三者視点の詳細なト書きで、ト書きがない故になんだか唐突な心的展開をする箇所もたくさんあるのですが、本作、ニコラス・ケイジが好きな人は楽しめると思います。とにかくニコラス・ケイジは満喫できます。そういうのを映画部スラングでは「ニコラス丼(にこらすどん)」といいます。

ちなみに今回は、この映画部コメントを書く前に、どんな出だしで書き出そうか、ちょっと考えていました。「犯罪」と「物語」についての覚え書きを書きたかったので、そっちを優先しましたが、夢想していた書き出しはお蔵入りすると二度と使えないので下記します。

今週の「なるほど・ザ・ワールド」は、タイ、バンコクです。レポータはニコラスさん。ニコラスさーん。
ニコラス・ケイジ:(トムヤムクンをすすって)oh! hot!

……という出だしでした。

うーむ、わざわざ書くほどのものだったか?

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