シン・エヴァンゲリオン劇場版

画像表示切り替え

Amazon で シン・エヴァンゲリオン劇場版 を買う

監督:庵野秀明, 鶴巻和哉, 中山勝一, 前田真宏
出演:緒方恵美、林原めぐみ、宮村優子、坂本真綾、三石琴乃
時間:155分
公開:2021年
ジャンル:
アニメ(日本)

コメント一覧

柴田宣史 | 簡易評価: おすすめ | 見た日: 2024年05月05日 | 見た回数: 1回

物語の感想として、しばしば「感情移入」という言葉を使うのを聞いて、落ち着かない気持ちになることが、ぼくにはある。めったに、登場人物の誰かに、感情移入することなんてないからだと思う。

でも、振り返ってみると、ぼく、20年間、わりとシンジくんには、感情移入をしていたように思う。めずらしいことに。

シンジくんに、周りの大人が、かける言葉や、叱責する言葉は、ぼく自身も「うるさい」と思う言葉。こんなに頑張ったり理不尽なことにも我慢しているのだから、もういい加減、ほうっておいてほしい。あなたのことはどうだか知らないが、ぼくはぼく自身の許容量いっぱいに物事と向き合って、ぼくだけに体験できるしんどさを知っており、いつでも死を受け入れる気持ちさえあるのだ。

でも、シンジくんの周りの大人は、作品の都合上、言葉は乱暴なことが多いけど、「シンジくんがつらいことはそれはそうだろうけど、でも、状況に対応しなきゃいけないので、我慢しろ」と言う。まあ、衣食住に不安のない世界だったら、甘やかしてあげたいけど、それこそ非常時に中心的役割を与えられてしまった14歳の少年に向けることができるのは、せいぜい同情くらいで、働いてもらわないわけには行かない。

* * *

本作品では、冒頭、シンジくんは、葛城ミサトたちレジスタンスが用意した村落に身を寄せる。

見てるぼくは、「あ、田舎だ。嫌だなあ。村民とやり取りをする綾波レイ(別レイ)も、なんだかステロタイプだなあ。SFっぽい言葉のやりとりや、かっこいい動きのシーンに早く戻らないかな」みたいな気持ちになるのと同時に「シンジくんのふさぎ込む描写はしばらくの長さのある溜めが必要で、でも、彼は徐々に回復するしかない。その回復はストーリ上の都合からでなく、ここまで環境を整えられたら、回復してしまうものだと思われるから」ということを考える。

* * *

シリーズを通して、けっきょくなんだかよくわからない「人類補完計画」。全員が一体になるのが目的っぽいけど、広げられた物語の風呂敷に対して、なかに入れるものの大きさが釣り合っているのか、いまいちよくわからない。その目的は、そんなに大事なことなのか、ピンと来ない。こんなに大変な目にあうなら、他者がいる世界をうまく生きていく選択肢のほうがコストは少ないんじゃないかと思ってしまう。いや、「戦争のない世界」みたいなものを想像したら、そのコストは悪くないのかもしれないけど、やっぱりリスク/ベネフィットがうまく見えない。

出来事はたいへんマクロなイベントとして起こるのだけど、碇父子においては、きわめてプライベートな問題として語られる。まあ、しっちゃかめっちゃかな状況にもっていった理由は語られないといけないというのはわかる。

新世紀エヴァンゲリオン 劇場版 THE END OF EVANGELION Air / まごころを、君に」では、シンジくんの幼少期を語ることで、シンジくんが他者のいる世界を選択するに至るけど、本作では、ようやくというべきか最もこじらせた大人である碇ゲンドウの幼少期から語ることで、碇ゲンドウを落着させる。

でもって、消費され尽くしたヒロインたちをそれぞれ幸せにし、シンジくんもようやく首を絞めないですむガールフレンドを手に入れる。

なんだか、うまく、この長い長い作品をまとめたなあと感じました。

ちなみに息子氏と一緒に、家族一同で見たのだけど、ぼく以外の感想は「シンジくんの周りの大人たちの説明が、二言(ふたこと)足らない」でした。

* * *

あんまり期待をしてなかったのも良かったと思うのだけど、大人たちが、シンジくんと同様に苦しんでいるのが、ようやくぼくにも理解できて、そうか、ぼく、この作品をいままであんまり理解できてなかったんだな、シンジくんへの感情移入が激しくて、不快な大人たちの言う言葉が聞こえてなかっただな、とあらためて思いました。ぼくがこの作品を見られるようになったのは、まあ、20年かける必要があったということかな、と思います。見てよかったです。

リンク