その男 ヴァン・ダム JCVD
画像表示切り替え監督: | マブルク・エル・メクリ |
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出演: | ジャン=クロード・ヴァン・ダム、フランソワ・ダミアン、ジネディーヌ・スアレム、カリム・ベルカドラ |
時間: | 96分 |
公開: | 2008年 |
ジャンル: コメディ |
コメント一覧
柴田宣史 | 簡易評価: おすすめ | 見た日: 2009年09月18日 | 見た回数: 1回
尾内丞二 | 簡易評価: おすすめ | 見た日: 2010年07月09日 | 見た回数: 未記入
以前、時代工房で
『嫁さんは可愛いだけじゃダメだろう。』
と言ったら、柴田・石田氏の両名が口を揃えて
『何言ってんだ。嫁さんは可愛ければそれでいいじゃないか。』
と言われた事がある。
この映画の主役、ジャン=クロード・ヴァン・ダムは80年代から90年代のハリウッド黄金期にB級アクション映画の根底を支えた二人の俳優のウチの一人である。
日本で言えば哀川翔や竹内力が相当する。
…が、哀川翔とヴァン・ダムとでは決定的に異なる点がある。
哀川翔はアクション俳優であるにも関わらずアクションがとれないのだ。
日本のアクション映画は概ねヤクザ映画と同義だから、アクションなんて必要ない。
恐い顔して鉄砲持ってりゃアクション映画になっちゃう。
一方のヴァン・ダムはというと、そりゃあもうよく動く。
出演映画では例外なく、世界で5本の指に入るであろう美しいアクションを展開する。
…極限にまで究めた体術は「格好いい」のではなく「美しい」のだ。
そしてその美しさの前では“ストーリー”とか“演技”なんてものはあまり意味を持たない。
そう。
『ヴァン・ダムはアクションが美しければそれでいい』のだ。
他になにか必要だったかしら…?
この映画はそんなヴァン・ダムのセルフ・パロディ映画。
長年ヨメさんが好きな役者だと勘違いしてセガール作品を観まくっていた柴田のお勧めだったのだが、これはもう期待しろという方が無理な注文である。
すっごく面白かった…。
…いや、“面白かった”というよりは“良い映画だった”と表現した方がしっくりくる。
アクションしか能がないかつての“スター”が体力のピークも過ぎ、養育権を争う裁判では弁護士にお金も満足に払うことができず、疲労困憊で地元ブリュッセルの郵便局に立ち寄ったところを郵便局強盗に巻き込まれるのだが、あとにも先にもこれほどまでにヴァン・ダムを応援した映画は他にないだろう。
この映画の彼は強くもなく、戦いもしない。
そんなどこにでもいる、普通の人間としてのヴァン・ダムが現実の問題に苦悩するのだ。
現実世界で待ち受ける“戦い”の殆どは、殴り合いや銃声によって簡単に決着がつくものではない。
にわかファンの声援や心なき誹謗中傷。一時の名声やゴシップネタによるバッシング。映画の中のヴァン・ダムはいつでも百戦錬磨の強者だが、実際の彼はそんな現実世界での戦いに負け続けてきた。
それでもヴァン・ダムは戦い続ける。
映画の中でも、現実の世界でも。
しかしそれは決して彼がアクション・スターだからという訳ではなく、守るべき物と心を持った人間だからに他ならない。どこにでもいる一般人として生きている我々と何も変わらないのだ。
戦え、ヴァン・ダム。
今日を明日に繋げる、ただそれだけのために。
す、すごく判断が難しい……。いや、やっぱり最高評価で!
白状するとほとんどヴァン・ダムの映画は見たことがありません。むかしはプレデターに入っていたとかまことしやかにいわれていたときもありましたが、入ってなかったみたいだし、何にしても見ていません。
でもって、この映画は、あれですよ、りっぱなメタ映画砲なんです(メタ映画砲については「僕らのミライへ逆回転」にて)。ちょっと抜粋。
長々と引用してしまいましたが、でも、評価で悩んだのはここじゃないんです。冒頭の長回しとその監督のダーツの的もいいんですが、やー、ラストがよかった。
でも、このラストがいいって、僕もそれなりの年齢になってきたのかなあ。ちょっと身につまされて、ほろっときてしまいそうになりました。