とらわれて夏 Labor Day

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Amazon で とらわれて夏 を買う

監督:ジェイソン・ライトマン
出演:ケイト・ウィンスレット、ジョシュ・ブローリン、ガトリン・グリフィス、トビー・マグワイア
時間:111分
公開:2014年
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この愛は、罪ですか?
ジャンル:
恋愛ドラマ

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でべ | 簡易評価: まあまあ | 見た日: 2016年07月07日 | 見た回数: 1回

邦題がヒドイ。「何も言えなくて、夏」か「どつかれてアンダルシア(仮)」が目の前にちらついてしまう。知った名前がなければスルーだろうけど、監督がジェイソン・ライトマンだったので、一応押さえておきますか、と。
ただ、あらすじが典型的なメロドラマなので、このタイトルはある意味正解かもしれない。amazonのレビューを覗いてみても、「感動的!」とか「涙が止まりません!」という言葉ばかりが並んでいて、なんだか自分が見た映画と同じ映画の感想なのか怪しい。かたや(たぶん男性陣の)「つまらない」、「非現実的」という意見がちらほら。

個人的には悪くなかった。メロドラマにありがちな濃厚なセックスシーンも、ふたりで「堕ちていく」のに酔うような演出もなく、非現実的な話ではあるけれど、目くじら立てるほどではない。映画ですしね。脱獄犯のフランクが完璧すぎる気はするけど、かれが上手く立ち回るので、その分ひやひやしたり、イライラせずに済む。

ケイト・ウィンスレットが素晴らしかった。夫に捨てられ、押し黙って生きている彼女は、人付き合いもなく、買い物は月に一度。でも殻にこもって自分を守っているというより、ずっとずっと戦っているように見える。いまある自分の形をとどめ置くために、どうにかするとこぼれ落ちてしまいそうなものをなんとか保とうと必死に努めているように見える。慎重にその作業を続けているから、多少の不具合(車の運転が苦手だったり、手が震えたり)はあるものの、大きな振れ幅でパニクったり奇行に走ったりはしない。劇中で「不安定なうつ状態」と言われているけれど、これまでに映画で見たうつ状態の人とは、見せる表情が全然違う。

ジェイソン・ライトマン監督が描くのは、いつも何かにつまづいてしまった人、という気がする。それが他人にとっては違いのわからない些細なことでも、気づいてしまったら戦わざるを得ない。
愛を得ること、家庭を築くこと。ある種の人々にとっては簡単で、特別な努力なんかしなくても手に入るフツーのことに、つまずいて、それが何故なのか答えを追い求める。世の中には多様なひとびとがいて、登場人物たちが取り立てて失敗をしたわけではない(JUNOはちょっと違うかな)。同じような人生でも何も疑わずに生きている人たちもたくさんいるだろうし、逆に順風満帆な人生だからと言って満ち足りているとは限らない。でも多かれ少なかれ、みんなが抱えている躓きを丁寧に取り出してみせる。
今回は結果的にはメロドラマかもしれないけど、丁寧さと趣味の良さで、抵抗感なく受け入れられる映画でした。
それともわたしがメロドラマに感情移入できるほど歳をとっただけ?

ちなみに原題の「Labor Day」はアメリカの祝日「労働者の日」。9月の第1月曜日で、子供たちはこの日が新学期前の最後の休みになるため、夏の終わりを告げる意味合いを含むそうだ。わたしたちにとっての8月31日みたいなもんか。まあ「夏の終わり」なんてタイトルでも、やっぱりメロドラマ感は拭えないか。

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