ブレックファースト・オブ・チャンピオンズ Breakfast of Champions

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監督:アラン・ルドルフ
出演:ブルース・ウィリス、アルバート・フィニー、ニック・ノルティ、バーバラ・ハーシー、ルーカス・ハース、オーウェン・ウィルソン、カート・ヴォネガット
時間:109分
公開:1999年
ジャンル:
SFドラマ

コメント一覧

柴田宣史 | 簡易評価: まあまあ | 見た日: 2013年07月31日 | 見た回数: 2回

原作を知るものとしては、よくできた映画化だと言いたいけど、映画そのものとしては、正直、原作を知らずにこの映画を見てもチンプンカンプンだとおもう。

原作は、シニカルな『ライ麦畑でつかまえて』というと、かっこうよすぎるのか、ある種の感性を持った人にとって、堪え難い社会であるアメリカで、正気を失いつつあるドウェイン・フーバー(ブルース・ウィリス)と、彼に啓示を与えるSF作家キルゴア・トラウト(アルバート・フィニィ*1)の出会いを描いた作品。

救いがたいSF作家で、世間から干されているので、ずいぶんとひねくれてしまったが、なんというか、人間の良心のようなものを重視することは忘れていない。しかし、シニカルすぎて、その味わいはほとんどの人に伝わることがないが、変人で富豪のローズウォータさんには通じる。ローズウォータさんは、キルゴア・トラウトを偉人であるとし、ローズウォータさんが住む街、ミッドランドまでキルゴア・トラウトを呼びつけて、街の芸術祭でのスピーチを頼む。

いっぽうドウェイン・フーバーは、家族の喪失、彼自身の不実や彼に理解できない性的倒錯や日々の間抜けとも言える仕事でほとんど自分を失っている。この精神的窮地から救い出してくれるサインを切望しているところに、偉人キルゴア・トラウトの名前を小耳に挟み、キルゴア・トラウトこそが自分を救うことができる唯一の人物であると思い込む。

かくして二人は出会うのだが、キルゴア・トラウトの手からむしり取ったSF小説、キルゴア・トラウト著『今こそ話そう』がドウェイン・フーバーにとって啓示であるとしていきおい、むさぼり読む。

自分以外に自由意志を持ったものはいない。この世界は神の冗談のような実験場で、ドウェイン・フーバーのみが、ロボットでなく自由意志を持っているのだ、と思い込む。

SFのプロットを自分への啓示だと思い込んだドウェイン・フーバーは、心のたがが外れて破壊と暴力に走る。キルゴア・トラウトは、自分の作品が人をおかしくしてしまったことを悲しむ。しかし、キルゴア・トラウトは責任を取って、ドウェイン・フーバーに、「人生の終わりまで幸せに生きることが、きみの仕事である」と信じさせて、この映画は終わる。

* * *

小説もおおむねこんな感じなのだけど、こういうヘンチクリンなはなしが、シニカルなアフォリスムで、(よい意味で)だらだらと続けられる。よくまあ、映画化しようと思ったものだ。

映画の端々には小説を読んだものだったらわかる挿絵や挿話があり、なんと画面の端っこにはヴォネガットまで登場*2する。

一言で言うと、原作ファン向けの映画だなーと思いまする。


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