ゆれる

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監督:西川美和
出演:オダギリジョー、香川照之、伊武雅刀、新井浩文、真木よう子
時間:119分
公開:2006年
キャッチコピー:
あの橋を渡るまでは、兄弟でした。
ジャンル:
サスペンスミステリードラマ

コメント一覧

柴田宣史 | 簡易評価: いまいち | 見た日: 2012年12月20日 | 見た回数: 1回

石田さんに読み解きを教わったのでメモです。

ここから先はお話の核心に関わる記述があります。このリンクで読み飛ばせます。あるいは次の見出しにスキップしてください。

石田さんによれば、あれは「自由な弟を妬む兄による、心中的復讐」なのだそうです。もしかしたら弟に意中の人を籠絡されたことや、彼女に邪険にされたことも手伝っているかもしれないけど、彼女の事故死を復讐に使うという、かなりアクロバティックな意図なのだそうです。

それだったらたしかに弟を焚き付けるのはわからなくはないけど、自分が7年牢屋に入っていいから、弟を苦しめたい、というのは、やっぱり理解を絶する。

それに弟は、もしかしたら一生気づかなかったかもしれない。

さらにいえば、やっぱり最後の微笑みの意味が分からない。

隠しテキストはここまでです。

ホントに? とおもうけど、それなら一応説明はつかなくないので、ちょっと上方補正。

* * *

むかし「ルル・オン・ザ・ブリッジ」を見たときにも、見終わった後、何のことだかわからなかったのを、中尾ハジメに解説してもらってわかったことがあるけど、今回もひとりで読み解くことはできませんでした。

ちゅうか、そういう読み解きをやりやすい作品ではないと思うのです。ので、やっぱり上方修正しても「いまいち」どまりで。

柴田宣史 | 簡易評価: ざんねん | 見た日: 2012年12月20日 | 見た回数: 1回

こら、あかんわ。

野田くんは「好きな一本」だというし、丞二も、石田さんもそれなりに高い評価なので見てみましたが、僕には、ほとんど駄目でした。

ここから先はお話の核心に関わる記述があります。このリンクで読み飛ばせます。あるいは次の見出しにスキップしてください。

兄弟ふたりの行動がぜんぜん理解できない。

「敬愛しつつ、しかし、なにか機会があれば、兄を貶めてやろう」と潜在的に画策していた弟と、「弟を愛しつつ、しかし弟を妬む自分を持て余し、弟によって断罪されるようしむけることで何かを得る兄」ということなんでしょうか。

偽証のため記憶を捏造する弟の気持ちも分からないし、弟を焚き付ける兄の気持ちも分からない。

7年を刑務所で過ごした兄の笑顔の意味も全く分からない。

「家に帰ろうよ!」と叫ぶっていうことは、あのバスは、痴呆気味になって、この数年面会にも来ない父を捨てて、どこかに旅立つバスなんですよね? それともあの笑顔は、バスに乗らない兄を示唆しているんですか? そうだとしても、やっぱりわからない。

それまでまじめに生きて来た兄は、この一連の行為で、そのまじめに生きて来た自分を台無しにし、田舎も貶める。弟は、一番最後、最終的には何かを得たかといえばそうかもしれないが、僕には、あの善良だが愚かな兄の7年間が、それに値するようには納得できない。誰だって「気づく」というのは、喜びだから、7年がただの無駄でなく、弟の気づきに結実したのは良かったかもしれないけど、それでニコニコできるほど、僕は人間が出来ていない。

隠しテキストはここまでです。

男兄弟が居れば、それともなにかわかるのだろうか。……いや、そういうはなしにもおもえない。作者はなにを描きたいと思い、見ている僕は何を得たらいいのか。もしかしたら分かる人には分かる良さがあるのかもしれない。映画もノベライズも賞をたくさんもらっているそうで、でも僕はお馬鹿な映画ばかり見ているから、こういう話を味わう能力がないのかもしれない。それは残念だが。

かろうじて良く分かるのは、田舎の雰囲気。それはよく描けていたと思う。この「よく」というのは「巧く」という意味。僕も田舎は苦手だけど、ジョー氏が車で帰省している風景からして、あの田舎の、僕にさえかろうじてあるノスタルジーを取り去って、嫌なところだけ切り取った映像はかなりのものだと思う。これは純粋に技巧的な部分については誉められる。弟や登場人物の暗い視座を描くという点では見事だと思う。

ジョー氏は、格好はいいけど、それだけに感じるし、香川照之さんはいい役者だと思うけど、本作に於いては演じすぎというか、卑屈な兄が殆どくどい。伊武雅刀さんはよかったけど、新聞紙干してるのはどういう意味なのか(いや、ふざけているのじゃなくて、ほんとうにあれはどういう意味なのか)。検察官役は画面占有率に比例した不快感があって、誘目性があるくせに画面が安定しない。セックスのシーンも見ていてなんだか不快。セックスのシーンを全部ハツっても成立しそうだし、中途半端な濡れ場なんか、兄の惨めさが際立って嫌になっちゃうから、いれなきゃいいのに。

* * *

野田くんとの話の種になるかと思ってみたけど、これは僕には無理でした。こういうのがイヤで邦画を見てなかったのだと再確認してしまいました。野田くんと談笑がしたかったので、とても残念。

追記:
翌朝でべちゃんとしゃべっていて思ったけど、もしかして「カインとアベル」をモチーフにしてる? でも、そうだとしても、兄弟の確執という観点からしか、そうおもえないし、ちがうのかなあ。

リンク

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