繕い裁つ人

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Amazon で 繕い裁つ人 を買う

監督:三島有紀子
出演:中谷美紀、三浦貴大、片桐はいり、黒木華
時間:104分
公開:2015年
キャッチコピー:
南 洋裁店。
頑固な二代目店主が、
“人生を変える一着”を仕立てます。
ジャンル:
ドラマ

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でべ | 簡易評価: まあまあ | 見た日: 2016年10月10日 | 見た回数: 1回

​数年前のひところ、はじめて自分でミシンを買って、何か作ったり直したりが楽しかった。そんなわたしに「裁縫気分が盛り上がるよ」といって友人が貸してくれたのが、漫画「繕い裁つ人」。仕立てとお直しを請け負う洋裁店を描いたその漫画は、読み終わるころには背筋が伸びているような良い作品だったのだけど、わたしの抱いた感想は友人が期待していたものとは違って「こんな洋裁店がうちの近くにもあればいいのに」。結局わたしは、自分がつくることが楽しいのではなく、自分の体格に配慮された、そしてきちんとからだに合った洋服を着ることが楽しいんだと思う。所詮わたし程度の腕では、洋裁本の型紙を型通りにつくるだけで精一杯、それってつまり、既製品を買うのと何も変わらない。それに、自分に似合うものが何か、確固たる自信があるわけでもないし。
映画になると聞いて、そして監督が女性と聞いて、さらに「しあわせのパン」や「ぶどうのなみだ」を撮った方だと聞いて、すごく納得した(これまたある種の職業系監督というべきか)。と同時に「たぶん見ないなあ」と思った。派手なアクションや大きなスクリーンで実際に見て見たい印象的なシーンがあるわけでなし、穏当に作ったところで、漫画でいいじゃん、て感じるのはわかってる。でもまあ、Huluに入ったので、漫画を貸してくれた友人との話のネタになればいいかなと。

見終わってみれば、やっぱりすこし背筋が伸びていて、たいへん穏当な映画化だった。漫画でいいじゃん、という思いは捨て切れないけど、もう一度出会い直す機会があったのは良かったかな。あしたはおしゃれをしてみよう、という気分にもなれて。

こうして2時間にまとめられると、少女漫画独特の、地に足がついていないふわふわしたキャラクターもややエッジがついて、人物像がくっきりしてくる。
市江さんは、祖母から受け継いだ洋裁店を守るため、頑固なまでに祖母のやり方にこだわる洋裁店店主。対する藤井くんは、市江さんが作る洋服をブランド化して価値を守りたい百貨店の営業さん。守ること、引き継いでいくこととは何なのか。お互いに歩み寄ることで、お互いの頑なさがだんだんと融解していく。

その代わりに原作にあった気の抜けたコメディ要素も削ぎ落とされて、ずいぶん硬い映画になっちゃってるけど。漫画を知ってるから補完して見られるけど、知らない人にはどんな風に見えるのかな。
対比がビビットになったなら、思い切ってコメディ寄りにして、ラブコメ風に「サイアク出会い」から始めてみても面白かったんじゃないかな。お互いうっとおしくて、相手が何を言っているのかさっぱり分からない、でも関係を深めるごとに、お互いの言い分がわかってくる、みたいな。