しらけていて熱のない世界。近代日本の文学者、夏目漱石のインテリの憂鬱は現代人の憂鬱といえる。やはり都会に住む人(現実的で合理主義者)に色濃いのでないかと思う。マニア兄弟といえる彼らは、都会の豊かな文化そのものだ。あれだけ趣味の世界が充実すれば、女性と付き合うこと自体煩わしいのではないかと思う。二人とも女性を見る目がないが、反省会で語られる女性の品定めは、ペットか盆栽を品定めしているようでまともに恋ができるのかと絶望的になる。
女性の方も問題ありのオンパレードだ。ビデオの店員の沢尻エリカは自意識過剰、その妹の北川景子も同じ穴の狢だ。そして、妹の方が若い分、イライラとザラザラとした感じが強い。落ち着きがなくサディスティックだ。恋人をサンドバック代わりに使うが、こともなげに恋人に置き去りにされてしまい傷ついてしまう。
姉の方は献身的に洗濯をして恋人に尽くすが、相手の男性から振り返ってもらえず挫折してしまう。もともと自己犠牲が苦手なタイプなので、めぐりあわせが悪かったのだろう。男運が悪く、自分の美貌を持て余す二人は哀れである。本気で芸能人を目指せばいいのにと思ってしまう(笑)。
ただし、この姉妹の男の好みは、正反対といえる。
間宮の弟を演じる塚地武雅は人妻を好きになってしまう。他人の女性に対して惹かれてしまう心理の持ち主である彼は、精神的に未成熟である。自分の判断に自信が持てないから、他人の判断に依存してしまうのだ。だから、他人の所有物に自然と目が行ってしまう厄介な性格。惚れた人妻もどこか母と通じるお嬢様タイプだ。しかし、戸田菜穂が演じた人妻は、ある意味間宮兄弟に一番近い女性といえそうだ。一応他人に対する気遣いが出来るけど、自分のこだわりに対して頑なである。ナルシスト的ともいえるが、高嶋政宏の演じた夫の方がナルシストの度合いが強い気がする。他人をはばからない暑苦しいワンマンタイプの男性のため、付き合うには骨が折れそうである。岩崎ひろみが演じた愛人はまともな人に見えるけど、その判断力が間違っている気がする。
常盤貴子の演じる女教師は、クールでない世界の人なのか。感受性が豊かであるが、いささか視野が狭い。気分屋でわがままな自分の感情に押し流されるタイプ。そして男に対する依存を考えると幸せを築けないように感じる。
中島みゆきの演じる天然お嬢様ぶりも、破壊的すぎる(子供である間宮兄弟の方が大人に見えて、笑いを誘う)。ちゃんと中島みゆきが役者をしていることは、称賛に値する。
間宮兄弟は、本当に生真面目で社会に対しても立派に社会貢献している。実に自分の能力を生かしてである。そこが救いになる部分といえる。シニカルに誇張された世界で、まともに感じるのは、ドラグストアの店員だった(笑)。間宮兄弟に対する接し方が母のように暖かく優しい。
ありきたりのドラマが嫌な人におすすめの映画だと思う。ほとんど自分のことしか考えてないような人間ばかりで間宮兄弟の世界はおかしいけど、SNSがはやり、定着した現在をナルシストの時代とみるなら、森田芳光監督は時代を鋭く見ていると言えます。