US公開版の感想です。
重苦しいテーマゆえ、観るのが辛い映画ではある。あまりにも重い。それでも語りを主人公の友人に設定して、淡々と描き、観る者をぐいぐい引きつける。
とてつもなく多くの悲しみと苦しみを背負ったもの同士が、瞬く間に恋に落ちるのも無理はない。
この主人公二人、悲しみや苦しみの種類こそ違ど、世界中のありとあらゆる悲しみと苦しみをいっぺんに背負ってしまったような悲惨な境遇を経てきた。だからあまりに偶然の出会いとはいえ、年齢差なども全く関係なしに男女の関係になったのだろう。だが単なる男女関係だけではなく、女にとって彼は父でもあった。彼女の両親は幼い頃に離婚したため、母親にひきとられた彼女の元にやがて継父がやってきたのだが、まさかの継父からのレイプ被害。だから恋人であると同時に満足に得られなかった父のような愛も感じたのだろう。
対する男のほうは、あまりに辛い身の上から子供を持つことができなかった。だからいわば年の離れた恋人である以上に、娘のような愛を感じたことだろう。
そしてもう一人の重要な登場人物が、彼女の元夫。この元夫もまた主人公の二人と同様、あまりに悲劇的な男だった。ベトナム帰還兵であり、戦争の痛手から精神に異常をきたし、まもなく夫婦生活が崩壊する。崩壊しただけならよかったがそれは更なる悲劇の序章でもあったのだからなおの事辛い。
辛く重い社会派映画。人間の「業」というものを考えさせられる。