1974年にワールド・トレード・センター(WTC)のツインタワー間での綱渡りを
当時25歳だったフランスの大道芸人のフィリップ・プティとその中まで達成した、挑戦の記録
このドキュメンタリー映画は、アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞をはじめとする
数々の賞を受賞し、映画レイティングの大手であるロッテントマトでもTOP100に入る好評化を得ている。
このドキュメンタリーの題材となったチャレンジは
本作のみならず、2008年には絵本綱渡りの男 (FOR YOU 絵本コレクション「Y.A.」)で
2015年にはロバート・ゼメキス監督作ザ・ウォーク(初回生産限定) [Blu-ray]で
題材となってます。
出来事から30年も経過して、再びこの題材が取り上げられたのは
無許可の、非合法のチャレンジだったことが大きいと思います。
チャレンジ当時も称賛の声はあったと思いますが
入館証を偽装したり、組織ぐるみでこれらのチャレンジをしたことで
表立って商品化などは難しかったのかと思います。
30年以上、経過したからこそいろんなことが時効になったり
関連する部署の組織変更などでやっと商品化出来るようになったのかと思います。
このWTCでの綱渡りが人々を魅了して止まないのは
”命を懸けて”のチャレンジだっただけではなく
無許可の、非合法のチャレンジだったからではないか、と個人的には思います。
プティはWTCの綱渡りは「権威への抵抗」と言っていたそうですが
禁止されていることを敢えてやる、法律を破る、といった部分も
人々が望む、”冒険” という意味に含まれている気がします。
このチャレンジが、関係各所に正式に手続きをつけて行われたものであったなら
これほど、大きく人々を魅了しなかったかと思います。
本作品にしろ、絵本にしろ、ロバート・ゼメキス監督の映画にせよ
このWTCの綱渡りを賞賛し、間接的にはこの犯罪を容認し、奨励していると言ってもいい。
これは社会として矛盾した振る舞いではあるけれども
人間の本質を示している気がしてます。
”社会秩序のために、ルールを守るように人々に求めながらも
それらを飛び越えてくる若者に期待を感じる、応援したくなる” といった気持ちでしょう。
例えば、私は子供の頃、柵を登ったり、工事現場に入って遊ぶなど
冒険をしてましたが、大人になると、
子供がそんなところで遊ぶのは反対ですし立ち入らせたくない。
子ども自身の安全というのもありますが
事故があれば、施設関係者にも迷惑がかかります。
それでは、そういった事故がないような環境に全てなればいいのか?
そういった危険な冒険をしないような子供になってもらいたいのか?
と考えると、全くそうではなく
禁止しても、リスクがあっても、好奇心が勝ってチャレンジするような
そんな子供に育って欲しいと思ってしまう。
社会的な規律という点では、決して褒められた "偉業" ではないですし
実際に彼らも、社会的にこのことを成功としての報酬を得られたわけではない。
しかしながら、それでもこの種の冒険を
人々は渇望し、魅了するのだと思います。