惑星ソラリス [DVD]
フォーマット | 色, ワイドスクリーン, ドルビー |
コントリビュータ | ドナータス・バニオニス, ユーリー・ヤルヴェト, ナタリア・ボンダルチュク, スタニスラフ・レム, フリードリヒ・ゴレンシュテイン, アンドレイ・タルコフスキー |
言語 | フランス語, ロシア語, 英語 |
稼働時間 | 2 時間 40 分 |
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商品の説明
Amazonより
『2001年宇宙の旅』に対するロシアの答えが本作品であり、同様に記憶に残る傑作映画である。ロシアの伝説的映画監督、アンドレイ・タルコフスキーがスタニスラフ・レフの小説『ソラリスの陽のもとに』を映画化し、綿密に練られたSF大作に仕上げている。ストーリーは宇宙飛行士(ドナタス・バニオニス)による惑星への不気味な航海に沿って展開されるが、その惑星では人間の潜在意識が実体化して現われる。あらすじのみを聞くとありきたりの宇宙探検物のような印象を与えるが(『トワイライト・ゾーン』のエピソードを引き延ばしただけのような)、神秘の旅を続けるうちに未知の世界に引き込まれていく。タルコフスキー監督の意図や手法には理解を超える点も多いが、『惑星ソラリス』は、とりわけスローテンポで先が読めない展開により観る人の頭の中にじわじわと入り込んでくる。ラストシーンが訪れるまでに、従来のSF映画をはるかに超越した感動的で奇異な記憶や故郷に対する幻想が描き出される。カルト的要素を十分含んだこの映画は、意欲的なアートシアター系作品であると同時に、狂気を帯びた幻想の旅の記録でもある。(Robert Horton, Amazon.com)
レビュー
監督・脚本: アンドレイ・タルコフスキー 原作: スタニスラフ・レム 脚本: フリードリヒ・ゴレンシュテイン 撮影: ヴァージム・ユーソフ 美術: ミハイル・ロマジン 音楽: エドゥアルド・アルテミエフ 出演: ナタリア・ボンダルチュク/ドナータス・バニオニス/ユーリー・ヤルヴェト/アナトーリー・ソロニーツィン/ウラジスラフ・ドヴォルジェツキー/ニコライ・グリニコ
-- 内容(「CDジャーナル」データベースより)
登録情報
- アスペクト比 : 1.78:1
- メーカーにより製造中止になりました : いいえ
- 言語 : フランス語, ロシア語, 英語
- EAN : 4933672227115
- 監督 : アンドレイ・タルコフスキー
- メディア形式 : 色, ワイドスクリーン, ドルビー
- 時間 : 2 時間 40 分
- 発売日 : 2002/12/16
- 出演 : ナタリア・ボンダルチュク, ドナータス・バニオニス, ユーリー・ヤルヴェト
- 字幕: : 日本語, スウェーデン語, スペイン語, フランス語, ロシア語, ポルトガル語
- 販売元 : アイ・ヴィ・シー
- ASIN : B00006RTTR
- ディスク枚数 : 2
- Amazon 売れ筋ランキング: - 45,168位DVD (DVDの売れ筋ランキングを見る)
- - 1,030位外国のSF映画
- - 1,553位外国のミステリー・サスペンス映画
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2022年1月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
レムの原作とは違った心象風景が描かれます。
ノスタルジアにも通じるラストシーンです。
ノスタルジアにも通じるラストシーンです。
2013年5月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
内容についての意見は省略。
画質:
米Criterion版は、最も状態のよいフィルムをできるだけそのまま生かして、必要以上に
いじることなくBlu-ray化したという印象を受けます。それと比較すると、コンピューター
で大規模なレストアをしたと思われます。これは、冒頭のクレジットを比較する
だけでも明らかで、Criterion版には「揺れ」が残っていますが、このソフトにはありません。
大きな相違点は「バートン報告」の色合いで、このソフトはCriterion版よりもかなり明るい色
になっています。
どちらの画質が良いかと問われると、これは好みの問題としか言いようがありま
せんが、後で発売されたこのソフトの方が、明るく、見やすくなっています。
Criterion版には所々キズやゴミも残っていますが、このソフトでは目立ちません。
ただ、粗探しをするようですが、「Criterion版よりも "明るい" のではなく "薄い"
のではないか。キズやゴミを減らす処理で情報量も減少したのではないか」という
可能性も否定できません。Criterion版にも捨てがたい味があります。
字幕:
私はロシア語はまったく分からないのですが、問題が少なくとも2つあります。
バートン報告のシーンで、「11回の飛行を経験した」という台詞がありますが、
VHS版では「11年」となっています。Criterion版の英語字幕でも「11 years」
とあるので、誤訳(誤記)と断定していいでしょう。常識的に、(宇宙船なら
ともかく)ヘリの飛行が「11回」で経験豊富なパイロットのはずがありません。
ハリーの「毒を飲んで」という台詞がありますが、ハリーは毒を注射しています。
英語字幕では "She poisoned herself" とあるため、この点については
ロシア語の専門家の見解が必要ですが、やはりVHS版の「毒を注射して」
の方が自然に思われます。
このソフトの字幕は、以前発売されたIVCの旧DVDと同じ字幕です。
この映画の日本公開時の字幕を担当されたのは、高名な岡枝慎二氏とのことですが、
何故それを採用(もしくはベースに)しなかったのでしょうか。今回、沼野充義氏が
作品解説を書いたということなので、字幕の問題が修正されると期待していましたが、
残念です。
以上、画質については、VHS→旧DVD→今回のBlu-rayと見てきた当方としては、
40年以上前のソ連映画という悪条件でのBlu-ray化でもここまできれいになった、
と評価したいと思います。旧DVDとは雲泥の差があります。
ただ、「他にも誤訳があるのではないか」という疑念がぬぐえない
(少なくとも旧訳を参考にしてブラッシュアップしたとは思えない)、
問題のある旧DVDの字幕をそのまま使用したIVCに対して★-1にしました。
映画の内容に対して★-1にしたのではありません。
※5/25に大幅に修正。
※5/26追加
上記の2つよりも問題なのは、ギバリャンの「遺書ビデオ」の冒頭の台詞が
「ごきげんよう」となっている点です。これから自殺する人間の台詞としては不適切
であり、現代の日本で中高年男性が「ごきげんよう」と言えば「お嬢様学校かよ」
となるのではないでしょうか。VHS版では「よく来た」となっています。
画質:
米Criterion版は、最も状態のよいフィルムをできるだけそのまま生かして、必要以上に
いじることなくBlu-ray化したという印象を受けます。それと比較すると、コンピューター
で大規模なレストアをしたと思われます。これは、冒頭のクレジットを比較する
だけでも明らかで、Criterion版には「揺れ」が残っていますが、このソフトにはありません。
大きな相違点は「バートン報告」の色合いで、このソフトはCriterion版よりもかなり明るい色
になっています。
どちらの画質が良いかと問われると、これは好みの問題としか言いようがありま
せんが、後で発売されたこのソフトの方が、明るく、見やすくなっています。
Criterion版には所々キズやゴミも残っていますが、このソフトでは目立ちません。
ただ、粗探しをするようですが、「Criterion版よりも "明るい" のではなく "薄い"
のではないか。キズやゴミを減らす処理で情報量も減少したのではないか」という
可能性も否定できません。Criterion版にも捨てがたい味があります。
字幕:
私はロシア語はまったく分からないのですが、問題が少なくとも2つあります。
バートン報告のシーンで、「11回の飛行を経験した」という台詞がありますが、
VHS版では「11年」となっています。Criterion版の英語字幕でも「11 years」
とあるので、誤訳(誤記)と断定していいでしょう。常識的に、(宇宙船なら
ともかく)ヘリの飛行が「11回」で経験豊富なパイロットのはずがありません。
ハリーの「毒を飲んで」という台詞がありますが、ハリーは毒を注射しています。
英語字幕では "She poisoned herself" とあるため、この点については
ロシア語の専門家の見解が必要ですが、やはりVHS版の「毒を注射して」
の方が自然に思われます。
このソフトの字幕は、以前発売されたIVCの旧DVDと同じ字幕です。
この映画の日本公開時の字幕を担当されたのは、高名な岡枝慎二氏とのことですが、
何故それを採用(もしくはベースに)しなかったのでしょうか。今回、沼野充義氏が
作品解説を書いたということなので、字幕の問題が修正されると期待していましたが、
残念です。
以上、画質については、VHS→旧DVD→今回のBlu-rayと見てきた当方としては、
40年以上前のソ連映画という悪条件でのBlu-ray化でもここまできれいになった、
と評価したいと思います。旧DVDとは雲泥の差があります。
ただ、「他にも誤訳があるのではないか」という疑念がぬぐえない
(少なくとも旧訳を参考にしてブラッシュアップしたとは思えない)、
問題のある旧DVDの字幕をそのまま使用したIVCに対して★-1にしました。
映画の内容に対して★-1にしたのではありません。
※5/25に大幅に修正。
※5/26追加
上記の2つよりも問題なのは、ギバリャンの「遺書ビデオ」の冒頭の台詞が
「ごきげんよう」となっている点です。これから自殺する人間の台詞としては不適切
であり、現代の日本で中高年男性が「ごきげんよう」と言えば「お嬢様学校かよ」
となるのではないでしょうか。VHS版では「よく来た」となっています。
2021年11月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
物語の内容なんて、どうでもよい!
とにかく映像が美し過ぎる!
バッハの音楽も最高!
とにかく映像が美し過ぎる!
バッハの音楽も最高!
2021年4月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
惑星ソラリスを探索中の宇宙ステーションとの通信がとぎれた。心理学者のケルヴィンは、ソラリスへ調査に行く。ソラリスの海そして霧は人類の心理を映す鏡、主人公は過去に犯した罪への悔恨に幾度も苛まれ、ソラリスの海の審判を受ける。
人間の理性の空虚さ、知性そして認識の限界を示唆する、啓蒙的な作品。
人間の理性の空虚さ、知性そして認識の限界を示唆する、啓蒙的な作品。
2023年9月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
昔の映画と言えど画質は現在のDVD以下でストーリーはSFと言うよりお金をケチった空想小説
であって、SFを期待していたのに残念な映画だった。
ケースは新品でディスクも完全にクリーニングされていたのは良かった。
この商品は1枚物で特典映像は全く無く、字幕は日本語のみで有った。
以上
2023/10/4 補足
ストーリーは俳優の会話がメインで見せ場はほとんど無く、完全に駄作だと感じた。
よって、購入する価値がなかった。
本来は星1つも付けたく無かったがディスクそのものは中古の割に良かったので2つにした。
以上
であって、SFを期待していたのに残念な映画だった。
ケースは新品でディスクも完全にクリーニングされていたのは良かった。
この商品は1枚物で特典映像は全く無く、字幕は日本語のみで有った。
以上
2023/10/4 補足
ストーリーは俳優の会話がメインで見せ場はほとんど無く、完全に駄作だと感じた。
よって、購入する価値がなかった。
本来は星1つも付けたく無かったがディスクそのものは中古の割に良かったので2つにした。
以上
2013年4月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
なんかレビューがドえらく沢山ありますがブルーレイのはあんまりなさそうなんで書きます。
アウターケースのデザインは銀ピカでどっかのテクノみたいで「ちょっとちやうやろ」と違和感あります。
だけどそれを取ったジャケットは色合いといい渋くて重厚感ありいい感じ。
ブックレットは正直大したことありません。
私は10年ほど前買ったケースがCDサイズのDVDを持ってましたが今見ると画像きつく字幕やたらでかく
モノクロ部分が青っぽくなってたりして、でも味わいがあるので大切にしてました。
その後とんでもないダサいジャケットでDVD再発されてましたが今回もあんなセンスだったら
どうしようと思ってたのですがまぁホっとしました。
画像に関しては驚愕,という程ではありません。
タルコフスキーといえば水面、ってな位なので冒頭の水面シーン観てみたら
「まぁ…いいんじゃない」ってくらいだった。
でも多分期待し過ぎなのだ。最近4Kとかいって古い映画でも凄まじいの出てるから。
それでもDVDとは比較しようない位の違いだけど。
多分公開時より鮮やかなんじゃないでしょうか。
でも画面サイズ1.78;1じゃないじゃん。上下帯なしであの首都高を観たかったのに。
内容についてはネットで「首都高が未来って笑える」とか「宇宙船内ちゃちい」とか笑う輩多くて
結構腹立ててしまうこと多し。CGの見過ぎなんでしょうけど。
言わせてもらえばホント最近の作品なんてCG多用で表現力が失われてるとしか思えんけどね。
私にとってはまさに神話。涙なしに見られない。(時々寝るけど)
SF映画なのに人間の内面に入ってゆくというのが凄い。
ホラーばりに怖い場面もあり、辛辣なラブストーリーでもあり、家族についての話でもあり、
名作と呼ばれる作品は多面性を持つ。
ラストの切なさ哀しさは何度観ても心が震える。
アウターケースのデザインは銀ピカでどっかのテクノみたいで「ちょっとちやうやろ」と違和感あります。
だけどそれを取ったジャケットは色合いといい渋くて重厚感ありいい感じ。
ブックレットは正直大したことありません。
私は10年ほど前買ったケースがCDサイズのDVDを持ってましたが今見ると画像きつく字幕やたらでかく
モノクロ部分が青っぽくなってたりして、でも味わいがあるので大切にしてました。
その後とんでもないダサいジャケットでDVD再発されてましたが今回もあんなセンスだったら
どうしようと思ってたのですがまぁホっとしました。
画像に関しては驚愕,という程ではありません。
タルコフスキーといえば水面、ってな位なので冒頭の水面シーン観てみたら
「まぁ…いいんじゃない」ってくらいだった。
でも多分期待し過ぎなのだ。最近4Kとかいって古い映画でも凄まじいの出てるから。
それでもDVDとは比較しようない位の違いだけど。
多分公開時より鮮やかなんじゃないでしょうか。
でも画面サイズ1.78;1じゃないじゃん。上下帯なしであの首都高を観たかったのに。
内容についてはネットで「首都高が未来って笑える」とか「宇宙船内ちゃちい」とか笑う輩多くて
結構腹立ててしまうこと多し。CGの見過ぎなんでしょうけど。
言わせてもらえばホント最近の作品なんてCG多用で表現力が失われてるとしか思えんけどね。
私にとってはまさに神話。涙なしに見られない。(時々寝るけど)
SF映画なのに人間の内面に入ってゆくというのが凄い。
ホラーばりに怖い場面もあり、辛辣なラブストーリーでもあり、家族についての話でもあり、
名作と呼ばれる作品は多面性を持つ。
ラストの切なさ哀しさは何度観ても心が震える。
2019年9月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ソ連作品を初めて観たのがこの「惑星ソラリス」だ。
1967年製作スタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」へのソ連からの回答と言う修飾語を付けられて並び称される、1972年製作の巨匠アンドレイ・タルコフスキー監督によるSF映画史に燦然と輝く不滅の名作だ。
世界各国の映画賞を総舐めしたメジャーな「2001」と比べて、カンヌ映画祭審査員特別賞だけの本作は如何にも地味で知らない人も多い。確かに資金力や映像技術は段違いでエンタメ性も低く、ロードショーには相応しい映画ではない。しかしながら本作の意図する警鐘とは、乱暴に言えば「2001」を科学と神の関係性とするなら、本作は哲学と神との関係性を共にSFで描いた双璧なのだろう。
惑星ソラリスの“意思を持つ海”の上空で観測を続ける宇宙ステーションで、三人の学者が“海”に対してそれぞれの主張や立場を闘わせる。
まず、天体生物学者のサルトリウス博士は自然科学と技術者の象徴として、真実を見極めるまで飽くなき科学的探求の手を緩めない。
二人目のサイバネティックス博士のスナウトは、通信・認知・行動を帰納法的に結び付ける社会科学と哲学の象徴で、三人の中では最も受容性に長けた存在。
最後の心理学博士の主人公クリスは、感受性に優れた人文科学と文学の象徴で、深層心理が具体化される特異な環境では一番影響を受けやすいナイーブな存在だ。
動物や植物に思想を巡らし、過去の記憶を含めたこの世の全てに“意義”を見出だそうとするクリスにとって、愛情こそが無限の闇であり、その答えの無い問いの為に苦悩が深い。
彼らの禅問答そのものに答えはない。その倒錯感は「2001」以上で、タルコフスキーは人の道徳や心の救済を捉えない作品は無意味と断じ、観客を敢えて不安な状態で自ら考えさせる余地を作る為に、同一人物が何度も登場する長回しシーンや、退屈さを覚える位のスローテンポなカットを駆使している。
この密度の脚本からすれば2時間49分は如何にも長いが、観賞時間そのものが我々観客の宇宙ステーションの滞在時間と考えれば合点が行く。聴いた一言一言の台詞や細かな演出を全身で受け止め、きちんと消化しないと前に進めないので勢い時間は掛かるのは仕方ない。
何気ない光景の中に比喩的表現が埋め込まれているのが本作を難解にさせている特色だ。水面の下で根を張って流れに抗う水草が自然摂理や法則、フリューゲルの牧歌風景画と馬や犬が人間社会や現実、突然降り注ぐ不可思議な大雨が自我を確認出来る唯一の手掛かりとする哲学、そして万有引力から全てを解き放つ無重力状態が愛と死のカオスと私は受け止めた。
三人の人生観と思想を見つめる惑星ソラリスの海とは、元から全てを知る創造主ではなく、人の意志が折り重なって産まれた宗教かも知れない。
いずれにしても当時バリバリの社会主義国ソ連の作品らしく自由や平等には触れていない。ただ闇雲に宇宙開発競争に高じる政府を批判し、この世に生きる生身の人間の尊厳と、全体主義社会の持続的な発展との間で折り合いを見付ける意図には時のソ連政府も公開に反対出来なかったのだろう。
米国は科学技術に焦点を当て、ソ連は哲学と社会に焦点を当てた。この対局に勝ち負けはなく、それぞれがSF映画史に名を遺すべき名作だと確信する。
Blu-ray画像は鮮明にして艶やか、音響は劇的な抑揚で心を掴む素晴らしさだ。また、特典映像はクリスの亡き前妻ハリー役を圧倒的な透明感と儚さで表現した女優ナタリア・ボンタルチュクの現在インタビューが秀逸で、なかなか臨場感がある。
手に入れにくい価格だが、SF好きの方なら少なくとも一度は観る価値の高い不滅の名作だと思います。
1967年製作スタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」へのソ連からの回答と言う修飾語を付けられて並び称される、1972年製作の巨匠アンドレイ・タルコフスキー監督によるSF映画史に燦然と輝く不滅の名作だ。
世界各国の映画賞を総舐めしたメジャーな「2001」と比べて、カンヌ映画祭審査員特別賞だけの本作は如何にも地味で知らない人も多い。確かに資金力や映像技術は段違いでエンタメ性も低く、ロードショーには相応しい映画ではない。しかしながら本作の意図する警鐘とは、乱暴に言えば「2001」を科学と神の関係性とするなら、本作は哲学と神との関係性を共にSFで描いた双璧なのだろう。
惑星ソラリスの“意思を持つ海”の上空で観測を続ける宇宙ステーションで、三人の学者が“海”に対してそれぞれの主張や立場を闘わせる。
まず、天体生物学者のサルトリウス博士は自然科学と技術者の象徴として、真実を見極めるまで飽くなき科学的探求の手を緩めない。
二人目のサイバネティックス博士のスナウトは、通信・認知・行動を帰納法的に結び付ける社会科学と哲学の象徴で、三人の中では最も受容性に長けた存在。
最後の心理学博士の主人公クリスは、感受性に優れた人文科学と文学の象徴で、深層心理が具体化される特異な環境では一番影響を受けやすいナイーブな存在だ。
動物や植物に思想を巡らし、過去の記憶を含めたこの世の全てに“意義”を見出だそうとするクリスにとって、愛情こそが無限の闇であり、その答えの無い問いの為に苦悩が深い。
彼らの禅問答そのものに答えはない。その倒錯感は「2001」以上で、タルコフスキーは人の道徳や心の救済を捉えない作品は無意味と断じ、観客を敢えて不安な状態で自ら考えさせる余地を作る為に、同一人物が何度も登場する長回しシーンや、退屈さを覚える位のスローテンポなカットを駆使している。
この密度の脚本からすれば2時間49分は如何にも長いが、観賞時間そのものが我々観客の宇宙ステーションの滞在時間と考えれば合点が行く。聴いた一言一言の台詞や細かな演出を全身で受け止め、きちんと消化しないと前に進めないので勢い時間は掛かるのは仕方ない。
何気ない光景の中に比喩的表現が埋め込まれているのが本作を難解にさせている特色だ。水面の下で根を張って流れに抗う水草が自然摂理や法則、フリューゲルの牧歌風景画と馬や犬が人間社会や現実、突然降り注ぐ不可思議な大雨が自我を確認出来る唯一の手掛かりとする哲学、そして万有引力から全てを解き放つ無重力状態が愛と死のカオスと私は受け止めた。
三人の人生観と思想を見つめる惑星ソラリスの海とは、元から全てを知る創造主ではなく、人の意志が折り重なって産まれた宗教かも知れない。
いずれにしても当時バリバリの社会主義国ソ連の作品らしく自由や平等には触れていない。ただ闇雲に宇宙開発競争に高じる政府を批判し、この世に生きる生身の人間の尊厳と、全体主義社会の持続的な発展との間で折り合いを見付ける意図には時のソ連政府も公開に反対出来なかったのだろう。
米国は科学技術に焦点を当て、ソ連は哲学と社会に焦点を当てた。この対局に勝ち負けはなく、それぞれがSF映画史に名を遺すべき名作だと確信する。
Blu-ray画像は鮮明にして艶やか、音響は劇的な抑揚で心を掴む素晴らしさだ。また、特典映像はクリスの亡き前妻ハリー役を圧倒的な透明感と儚さで表現した女優ナタリア・ボンタルチュクの現在インタビューが秀逸で、なかなか臨場感がある。
手に入れにくい価格だが、SF好きの方なら少なくとも一度は観る価値の高い不滅の名作だと思います。